みんなで考え、つくる、シビックエコノミー

「多様性」と「包摂性」は現代社会では重要な概念。それをあらためて感じさせる講演・ワークショップに参加しました。

認定NPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸が主催するシビックエコノミーフォーラムで、「シビックエコノミーの動向」として紫牟田伸子さんの講演のあと、立命館大の林永周講師のワークショップの2部構成


 

「シビックエコノミー」とは


コミュニティビジネスソーシャルビジネスという概念は、これまでも長く使われ、多くの主体で取り組まれています。紫牟田さんはこの言葉の中に潜む主体の限定性やドライさのようなものを指摘しています。そういったものを包摂し、地域の多様な主体が多様な方法で「循環」を作ることを「エコノミー」という言葉で表したものと理解しました。

ビジネスの手法で、特定の主体が地域課題を解決するために活動することじたいを否定するものではありません。実際、「ビジネス」と名乗りつつ、ここでいう「エコノミー」の活動をしている主体も多くあるだろうと思います。

 

講演では、イギリスや日本におけるシビックエコノミーの実例を多く織り交ぜ、その考え方が示されました。具体的な無数のアプローチのしかたを、「ひらく」「共有する」「複合する」「転用する」「資源化する」の5つに分類するアイデアは、多様な主体が多様な課題をどのように解決しようとするかの道標となるでしょう。

多様性といえば、関わり方だって「他人が主体的に関わるのを応援する」ということもひとつの関わり方なわけで、より多くの人が寄ってくる間口を広げる考え方は重要だと思います。

 

おカネはどうするの?というのも多様な手段。すぐに思いつく「補助金」だけではありません。財・サービス販売、共感を持つ人や団体からの寄付、出資、運用など、すぐれた主体は様々な方法を活用します。(日本では少ないですが、アメリカ等ではファンドレイザーが驚くような額の資金を調達し、一つの職業として成立しているようです。)むしろ補助金は既得権化したり改善のインセンティブを減らすおそれもあるだろう考えられます。

 

面白い講演内容で、時間が経つのがあっという間でした。事例のひとつひとつにも共感し、実際に見てみたいなと思うものばかりでした。領域(テーマ)が複合した関係性が生まれ、まちの人たちの暮らしをサポートしている事例の数々。いやしかし、「サポートする、される」の関係ではなく「共に活動している」関係という方が近いかも、というふうにも感じました。

 


レゴブロックでシビックセンターを作ろう!


後半は、なんとレゴブロックを使ったワークショップ。まずレゴブロックに慣れるため、5分で作品(「一番嫌だった先生」など)を作り、それを説明するというワーク。

戸惑ってしまうことの1つは、相手の目を見ず、作品だけを見て話す、聴くこと。目を合わすと同意を求める圧力になってしまうからだそうです。

もうひとつ戸惑うのは、作品の細部に無理やりでも意味付けすること。例えば「なぜこの部分は赤色なんですか?」という質問には、「それしかなかったから」ではなく「情熱です」みたいな答えをその場で作ること。作品の巧拙は問題ではなく、そこで話されたことが重要。

最後は本題として、理想とするシビックセンターを各人が作り、それぞれの最も大事な部分を持ち寄ってグループのシビックセンターを作りました。

 

実際やってみて、作品の巧拙は問題ではないとは言え、やはり気になってしまいました。レゴブロックで遊んだ経験はほとんどないし、グループめちゃめちゃ上手いワカモノがいたりして、なんかちょっと気恥ずかしくなりました。

また、初めの方のワークでの無理やりな意味づけは、瞬発力で切り抜けるトレーニングになりますが、同時にエビデンスなしにやり過ごしちゃうことにもつながる感じがしました。ただ、本題のワークにおいては、元々それぞれ考えのベースがあって作品が作られるので、周囲からの質問にそのベースの上で答えられて、さらに考えが深まっていきました。

 

やはり形になると、他者の話したことがより残りやすいです。プレゼンを聴くだけでは忘れることも、具体的なモノを見て聴くと繋がって理解できました。

また、みなさん意味づけがとても上手くて、次々にブラッシュアップされていくアイデアにより、いいイメージと作品ができたと思います。



多様な主体が多様な方法で、これからの社会のありようを変えていくでしょう。常に変化の中にある僕たちは、そのベクトルを正の方向に向けていけるだろうと思っています。



(ライター:ふろしき)